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未来医療について考える Vol.5

MILK株式会社代表の中矢です。

私はMILK株式会社という医療機器ベンチャーを立ち上げたことで、医師や看護師を含め、多くの医療従事者の方のお悩みをお聞きする機会をいただいております。

加えて、投資家や同業者の現場から一歩離れたマクロな視点での医療の見え方をお聞きすることもあります。

そこから感じ取れる私個人の視点からみた医療の未来についてお話できればと思います。

今回は特にiPS細胞の登場以降、注目が集まっている再生医療から未来医療を見通していきたいと思います。

私の知り合いの経営者の方々からも、国内では認可をされていない再生医療をうけるために東南アジアの国まで医療ツーリズムに行ってきたというお話をよく耳にします。

再生医療にも様々な種類がありますが、その代表格ともいえるものが「幹細胞注射」です。

国内でもおへその周りや耳の後ろあたりの細胞を採取し、体外で培養します。

その後、培養した細胞や培養液を注射することで美容効果や関節痛を和らげたりする効果が期待できると言われています。

また、再生医療の分野では、免疫細胞や皮膚細胞などの最終分化細胞を培養し、利用する治療薬も多く開発されています。

ノバルティスファーマ社の「キムリア」はT細胞という免疫細胞を患者さんから摂取し、培養することでガン治療を行う製剤です。

キムリアは、2019年に厚生労働省にて3349万円という過去最高額の薬価で承認されたことがニュースでも話題になりました。

このように現在では、再生医療は高額な金額で提供されており、劇的な効果が得られないケースも多いようです。

また、研究段階のものが多い為、「再生医療」をうたった製品の中には詐欺まがいの粗悪品が横行しているのも間違いないでしょう。

しかしながら、私は再生医療に大きな可能性を感じています。

1997年に浅原孝之医師により発見された血管内皮前駆細胞(EPC)は、血液中に存在する幹細胞です。

このEPCを血液中から取り出し、培養してから血液の流れが悪い部分に投与すると血管再生が期待できると言われています。

例えば、重度の糖尿病による手足の腐食に対しEPCの有効性が期待されています。

腐食している部分は、血液のながれが阻害 されているため細胞に栄養が 届かない 状態 に陥っています。

そこにEPCを投与し、血管再生を促すことで、周辺の組織を再生することができると考えられています。

現在、順天堂大学にて臨床研究が進んでいます。

また、腎機能が低下し、透析を余儀なくされている方々にもEPCの有効性が期待されています。

一般的に腎機能が10%以下まで低下すると、体内の老廃物を人工的に排出する必要があるため透析という判断になります。

そこで、このEPCを腎臓に投与することで、腎臓内の血管を再生し、腎機能の改善ができるのではないかと言われています。

このように細胞のもつ機能がより解明 され、その応用が 進んでいくことで、患者さんにとって、より負担 の少なく、生活環境 を変えない医療が拓けていくことは間違いありません。

再生医療について知れば知るほど、私たちの肉体の神秘を感じます。

私たちの体の中で起こっていること、臓器や 組織 、細胞、遺伝子 の役割 を知ることが、これまで 述べ たような治療法の開発につながっています。

つまり、どんな患者にも劇的な回復をもたらす未来医療を到来さ せるためには、より深く人間について知ることが不可欠ということです。

人間の体に眠るポテン シャルはまだまだ解明 されていないのかもしれません。

(参考文献)日本経済新聞2019年5月14日「白血病治療薬「キムリア」、薬価3349万円で調整」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44802710U9A510C1EE8000/順天堂大学 最先端・次世代研究開発支援プログラム

https://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/saisentan2/outline.htm

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