最新医療AI論文

【1月】医療×AI 最新論文3選

こんにちは。MedTechToday編集部のいとうたかあきです。

arXivは、理数系の英語論文を無料で読むことができるWebサイトです。

https://arxiv.org/

時間のかかる査読プロセスを避け、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されていて、最新の研究の動向を把握するのにとても便利です。本記事では、医療AIの分野で1月中に投稿された最新のarXiv論文を3つ紹介します。

1.WearMask:コロナ禍における、サーバーレスエッジコンピューティングを用いたブラウザ内でのマスク検出

Zekun Wangらの論文です。アメリカにおいてコロナの大流行に対する国民の健康管理は重大な課題です。CDC(疾病対策予防センター)によれば、コロナの感染は主に呼吸したり、話したり咳やくしゃみをしたときなどに生じる飛沫によって起こります。

そうした飛沫感染の80%を防止するのに、マスクをつけることは主要で効果的かつ便利な方法です。

それゆえに、病院や空港、公共交通機関、スポーツ施設、小売店などできちんとマスクをつけているかを検出・モニタリングするシステムが開発されてきました。

しかし、商業用のマスク検出システムを利用するには特定のソフトウェアまたはハードウェアが必要であり、一般的に使うことが難しいです。

そこでZekun Wangらの論文では、WearMaskと呼ばれるウェブベースのAIによる効率的なマスク検出が可能となった、ブラウザ内サーバーレスエッジコンピューティングを提唱しました。

WearMaskは、特別なソフトをインストールしなくても、携帯やタブレット、コンピュータなどのネット接続ができるあらゆるデバイス上でデプロイが可能です。

この設計により、ハードウェアのコストも最小限に抑えることが出来ました。この手法は、「ディープラーニングモデル」、「高性能なニューラルネットワークの推論計算フレームワーク」、「スタックベースの仮想マシン」を統一する全体論的エッジコンピューティングフレームワークの提供をしています。

また、エンドユーザーにとってウェブベースの方法はデバイスの制限やプライバシーのリスクが少なく、無料でデプロイができ、少ない計算量で素早く検知できるという利点があり、簡単に使用することができます。

WearMaskはhttps://facemask-detection.com/で利用できます。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2101.00784

Pick Point

マスクをしているかチェックできるエッジコンピューティングシステムの開発に成功!

2.次世代の人工知能

ミシガン大学のOdest Chadwicke Jenkinsらの論文です。

私たちの社会全体で人工知能への数十年にわたる投資の影響が見られるようになってきました。

近年、AIシステムは、ヘルスケア、交通、金融、設計・製造、教育、科学的発見、国家安全保障など、幅広い応用分野で展開されています。これらのアプリケーションの多くは、重要な社会問題に対処し、人々の生活を直接改善してきました。

しかし、自動医療診断や自律走行車などのAIアプリケーションの広範かつ有益な利用は、現在のAIの技術では限界があります。

現在のAIは、脳の構造に着想を得たディープニューラルネットワークが主流であり、この 技術 はコンピュータ・ビジョン、音声認識、言語処理、 ゲーム・プレイング、ロボット工学において多くの成功と新しい能力をもたらしてきました。

このようにそれぞれの分野での応用は効きますが、広範囲の応用となるといくつかの要因により、発展が妨げられています。

まず、ディープニューラルネットワークは通常、大規模なデータセット、つまり数千から数 百万 の例題に対して手動でラベル付けされた「教師付き」のトレーニングを必要とします。さらに、ラベルには、あからさまなバイアスと微妙なバイアスの両方だけでなく、エラーが含まれていることもあります。

また、ディープラーニングの手法は大規模なコンピューティング・インフラストラクチャを必要とし、その電力使用は環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに問題なのは、今日最も発展を遂げているAIシステムでさえも、訓練された状況とは異なる状況に直面したときに、予期せぬ方法で失敗する可能性があるという脆弱性に悩まされていることです。

このロバスト性の欠如は、敵対者攻撃に対するAIシステムの脆弱性にも現れています。

これらの問題点を合わせると社会にAIを広く普及させるための十分な信用を得ることは難しいでしょう。

そこで本論文では、以下の5つの重要な課題を提起します。

1.既存の知識を、データを多く含む機械学習アプローチと統合する方法を見つけること

2.人間の専門家に大量の訓練データのラベル付けをさせる必要性を超えること

3.相関関係だけでなく因果関係を学習できる技術を開発すること

4.AIの倫理的応用を研究する機関への奨励を増加させること

5.AIが以前 は人間が行っていた作業を 多く引き受けるようになったときの説明責任と責任の未解決の問題に対処すること

堅牢で、説明可能で、適応性があり、倫理的なAIシステムを構築するために、本論文は、現在の教師付きディープラーニングの重視を超えた新しいアイデアへの実質的な投資を推奨します。新しいアイデアとは、AIの基本的な考え方、認知科学や脳科学からの発見の関連性、さらには、デジタルと量子の間のすべてのオプションを考慮して、コンピューティングの基本的な前提条件を再検討することにまで及びます。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2012.06058

Pick Point

次世代の人工知能のあるべき姿を提示!

3.クイックアノテーター:オープンソースのデジタル病理学の高速アノテーションツール

ケース・ウェスタン・リザーブ大学のRuntian Miaoらの論文です。

画像に基づくバイオメーカーの発見は、デジタル病理学内での全体のスライド画像(WSI)で組織学構造(例えば細胞核、細尿管、上皮の領域)の正確な分割が必要です。

残念ながら全ての関心部分の構造のアノテーションは骨が折れ、ちょうど良い大きさの群であっても処理がしづらいです。

ここでは、組織構造のアノテーション効率を桁違いに改善するように設計されたオープンソースツールであるクイックアノテーター(QA)を紹介します。

ユーザーが直感的なWebインターフェイスを介して関心領域(ROI)にアノテーションを付ける一方で、深層学習(DL)モデルは、これらのアノテーションを使用して同時に最適化され、ROIに適用されます。

ユーザーはDLの結果を繰り返し確認して、

(a)正確にアノテーションが付けられた領域を受け入れるか、

(b)誤ってセグメント化された構造を修正して、後続のモデルの提案を改善します。

3つのケース

(a)5つの膵臓のWSI内の337,384の細胞核

(b)10の直腸のWSI内の5,692の細尿管

(c)10の胸部のWSIの14,187の上皮の領域

へのアノテーションを通じて、手動作業に対するQAの有効性を示します。

その結果、それぞれ毎秒102倍、9倍、39倍のアノテーションに関する効率の向上が、fスコア> 0.95を維持しながら確認されました。

これは、QAがWSIに効率的に完全にアノテーションを付けるための貴重なツールである可能性を示唆しています。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2101.02183

Pick Point

WSIのアノテーションを効率化できるオープンソースツールを作成!

まとめ

以上、医療AIの分野で1月中に投稿された最新のarXiv論文を3つご紹介させていただきました。

興味のある内容がございましたら、ぜひURLから原文をお読みください。

医療を手助けするAIの研究が現在進行形で、世界中で進められています。

皆様の日々の研究や患者さんの治療の際に何かしら参考になることがありましたら幸いです。

長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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