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未来医療を考える Vol.4

MILK株式会社代表の中矢です。

私はMILK株式会社という医療機器ベンチャーを立ち上げたことで、医師や看護師を含め、多くの医療従事者の方のお悩みをお聞きする機会をいただいております。

加えて、投資家や同業者の現場から一歩離れたマクロな視点での医療の見え方をお聞きすることもあります。

そこから感じ取れる私個人の視点からみた医療の未来についてお話できればと思います。

今回は特に未来医療の姿を、最新の研究やベンチャー企業を通して考えていきます。

・健康心理学の登場 

1980年代から心理学の一部門として誕生した「健康心理学」という分野をご存知でしょうか?

「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」の著者として有名なケリーマクゴニカル教授の研究分野がこの健康心理学です。

マクゴニカル教授は、「その人がもつ世界観によって身体のストレス反応が変化する」ことを多数の実験例を紹介しながら主張しています。

遺伝的傾向を注視しがちに思われる医療業界ですが、似たようなご意見を現場の医師の方々からよくお伺いします。

「大腸の病気になる人は繊細な方が多い」

「心臓の弱い方は恐怖心がつよい」など

彼らは患者さんの精神的特徴と病気の関連を指摘されていました。

これまでは、経験則的に語られていた健康に対する「心理的影響」が、気休めではなく実際に役に立つものとして世界では注目され始めています。

この延長線で考えられるのは、患者さんの「世界観」=「こころ」を変えることが病気の予防につながるというものです。

実は、このような取り組みはすでに始まっています。

①森林浴によるガン予防

近年、森林浴によるガン予防が注目されています。

森の中を歩くことでストレスホルモンが減少し、血圧が低下することが知られています。

また、森林療法によりナチュラルキラー細胞が活性化し、免疫力が高まることによりガン予防につながることも判明しています。

対人コミュニケーションに苦手意識のある20人の男女が森林療法を経験するとコミュニケーションが豊かになり、役割意識も出てくると言われています。普段ビルやパソコン、スマートフォンなどの無機物に囲まれて過ごすことの多い現代人にとって森林浴自体が新鮮な世界観を与えるものなのかもしれません。

②マインドフルネスによる免疫力の向上

また、マインドフルネスを向上させる瞑想もスタートアップ各社が取り組みを開始しています。マインドフルネスとは、現在ただいまの意識に集中することにより過去の失敗や未来の不安に悩まないようにすることで得られる幸福感のことです。アメリカのスタートアップ「Calm」は時価総額がすでに1000億円をこえるユニコーンに成長しています。

こうしたマインドフルネス瞑想により、不眠症の解消や免疫力の向上がみられ企業でも導入が進んでおり、精神が健康に影響するのは当然であるという考え方がアメリカでは広まっています。

では、日本ではどうでしょうか?

もちろん精神と体調の連動は常識となりつつありますが、それが治療にまで生かされているとは思えません。特にガン治療においては、目の前の患者さんのこころではなく、体の反応のみにフォーカスした治療行為が多くなっているのは事実だと思います。

すでに確立された治療方法があることは事実ですが、患者さんのこころが健康に影響することを前提にすることで、より負荷の少ない治療を開発することは可能です。

もちろん、そこには科学的な検証可能性が介在するべきですが。

・終わりに

これまで抽象的にとらえられてきた「こころ」を分析・解析し、そして世界観を変えるような体験を提供することで身体まで治療するという時代が始まってきたように思います。

未来の医療者には人の心をより深く理解することが求められているのかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。

(参考文献)

ケリーマクゴニカル著「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」

日本経済新聞社12月7日朝刊

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67060130W0A201C2CR8000/

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