
MILK株式会社代表の中矢です。
私はMILK株式会社という医療機器ベンチャーを立ち上げたことで、医師や看護師を含め、多くの医療従事者の方のお悩みをお聞きする機会をいただいております。
加えて、投資家や同業者の現場から一歩離れたマクロな視点での医療の見え方をお聞きすることもあります。
そこから感じ取れる私個人の視点からみた医療の未来についてお話できればと思います。
今回は特に未来医療にもとめられる人材像にフォーカスした話をしたいと思います。
1.マネジメント能力
私が共同研究や営業活動の中でお話する50~60代の医師の先生方からよく伺う話のひとつにMRの営業形態の変化があります。
一昔前まで製薬会社と病院の間には「接待」や「袖の下」に代表されるような黒いウワサが後を絶ちませんでした。
しかしながら、2012年4月からは「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」という製薬業界の構成・公平な取引を目的として設立され、医療機関の透明化が進んでおります。
今では、フリーランスの医師も増加しています。これも利権やしがらみではなく実力や実績による評価が進んできていることを示していると考えられます。
では、今後の医療関係者に求められる能力はどんな能力でしょうか?
まず、マネジメント能力が挙げられると思います。
今までは大学病院や自治体の助成を受けた病院がエスカレーター式に医師を雇用することが大半でした。
しかしながら、いまは病院の7割が赤字で、労働人口の減少もあり、厚生労働省としても医療費削減に本腰を入れ始めている状況です。
こうした状況を受け、自由診療で収益を得るクリニックが増加しています。
病院は原則として営利目的での設立は許されていないことから、企業やマネジメント能力を持つ医師によるクリニックの設立が相次いでいます。
私もよく経営コンサルのミートアップに参加しますが、参加者の中にクリニックの医師の方々をよくお見掛けします。
今後は、医療従事者の多くが助成金に頼らない医療機関への就職していくことが想定されます。
そのため、医療者にも専門性ではなくマネジメント能力が求められる流れが進むと予想されます。
2.AI・ICTリテラシー
次に、AI・ICTリテラシーが挙げられます。
コロナショックの影響もあり、AI診療や遠隔診療などが頻繁に報道されるようになりました。
導入の形や、普及のタイミングは見通しを立てるのは困難ですが、今後、医療AIやICTの導入が進むことは国外の状況を見ても明らかです。
D to D (Doctor to Doctor)だけでなく、D to P (Doctor to Patient)の流れも加 速しており、 患者さんの病院選択の大きな要素をAI・ICTが占めていくことが予想されます。
NOBORIなど医療クラウドサービス等も一部普及が始まっています。
こうした技術導入には慎重論や反対意見が多数あることは否めません。
しかし重要 なのは、正しく技術を理解し、感情に流されず判断することだと思います。
こうした理由からAI・ICTリテラシーは今後医療者にも求められるスキルとなると考えます。
3.コミュニケーション能力
最後に、コミュニケーション能力が挙げられます。私はこれが最も重要なスキルだと考えています。
これまで申し上げているとおり、今後の医療は個別化や均一化が進んでいくことは疑いようのない流れです。
その医療に求められるのは、患者さんにとっての最も大きい付加価値である「コミュニケーション」です。
「信頼できる医療者に治療をしてもらいたい」「自分のことを本気で心配 してくれている人に診てもらいたい」というそうした心に寄り添った医療がトレンドになるでしょう。
医療者や医療機関がカルテを一方的にお返しする時代から、患者さんからのレビュ ーを受け取る時代に変化してきています。患者さんの本音を読み取り、体だけでなく心も癒していくことが大切です。
設備の充実度ではなく、いかに真剣に患者さんに向き合っているかが重要です。
近代医学の祖とも称される緒方洪庵はこのような言葉を残しています。
「たとい救うこと能わざるも之を慰するは仁術なり」
体だけでなく心を治すことこそ医療の本懐であるという思いが感じられます。
この記事を読まれた医療者の方々がますます発展繁栄することを祈念しております。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(参考文献)
医療ITサービスNOBORIについて
https://www.nobori.in/product/nobori/
厚生労働省「医療におけるICTの利活用について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000517679.pdf