最新医療AI論文

【10月下旬】医療×AI 最新論文3選

MedTechToday編集部のいとうたかあきです。

arXivは、理数系の英語論文を無料で読むことができるWebサイトです。

https://arxiv.org/

時間のかかる査読プロセスを避け、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されていて、最新の研究の動向を把握するのにとても便利です。

本記事では、医療AIの分野で10月下旬に投稿された最新のarXiv論文を3つ紹介します。

1.結腸癌および肺癌の組織病理学的画像を診断するための畳み込みニューラルネットワーク

EngineerBabuのSanidhya Mangalらの論文です。

肺癌と結腸癌は、成人の死亡率と罹患率の主な原因となっています。組織病理学的診断は、癌の種類を識別するための重要な要素です。

本研究の目的は、これらの癌のデジタル病理画像から、畳み込みニューラルネットワークを使用して扁平上皮癌および肺や結腸の腺癌を診断するための診断システムを提案することです。

まず、肺腺癌、肺扁平上皮癌、肺良性、結腸腺癌、および結腸良性の5つの異なるクラスについて、各5000枚の画像が含まれているLC25000データセットから合計25000枚のデジタル画像を取得しました。

肺癌についての分類では、浅いニューラルネットワークアーキテクチャを使用して、スライドの病理画像を扁平上皮癌、腺癌および良性に分類しました。

同様にして、結腸癌について、腺癌と良性を分類しました。肺癌と結腸癌それぞれの診断精度は97%以上と96%以上でした。

これらの結果から、カラー画像を分類するために設計された浅いCNNアーキテクチャを使用し、それを肺および結腸の組織病理学的画像の分類に適用できることがわかりました。

また、CNNアーキテクチャのトレーニングを改善することで、識別対象の画像を低解像度の画像に変換することなく、高解像度の画像を処理できるようになりました。

本研究において、LC25000で得られた実験結果は、従来の機械学習モデルや深い畳み込みニューラルネットワークモデルと比較しても、浅いCNNによって識別精度の向上が得られることが示されました。

今後の研究では、異なるCNNアーキテクチャの利用、ハイパーパラメータの最適化、さらには、様々な組織病理学の画像生成方法についても検討しています。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2009.03878

Pick Point

浅いCNNによって肺癌と結腸癌の種類を高精度で診断可能に!

2.RCNNによるホールスライドイメージング(WSI)の関心領域検出

オーストラリアのマードック大学のA Nugaliyadde氏らの論文です。

近年、デジタルパソロジーが大きな注目を集めています。

ホールスライドイメージング(WSI)は、ギガピクセルの解像度であり、非常に大きなデータ量となるため解析が困難です。

病理医にとって、関心領域(ROI)を特定することは癌検出やその他の異常を診断するためにさらに分析するための最初の重要なステップです。

本研究では、ROIを検出するために、少数のラベル付けされたWSIだけを用いて訓練に用い、深層機械学習技術であるRCNNの使用を検討しました。

RCNNモデルのトレーニングには60個のWSIを使用し、さらに12個のWSIをテストに使用しました。その後、モデルはさらに新しいWSIのセットでテストされました。

その結果、RCNNはWSIからのROI検出で効果的に使用できることを示しました。このことは、病理医が正常リンパ節及び良性リンパ節内にリンパ腫の胚中心を含む確率の高い領域を検出するのに役立つ可能性があります。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2009.07532

Pick Point

RCNNがホールスライドイメージングからの関心領域検出に効果的に使用できることを実証!

3.大域的にフィルタリングされたセグメンテーションのための適応性のあるニューラルレイヤー

Viktor Shipitsinらの論文です。

この研究は、病院での超音波の検査中にとられた画像に動機づけられています。

画像の粒子の粗さ、解像度やコントラストの低さから専門家 の手を借りなければ対象を識別することや病状を突き止めることもできないほど でした。

そのようなデータを基にセグメンテーションモデルをトレーニングさせると、過度な前処理や画像の調整が必要なうえ、人工物のデジタルポストフィルタリングを行ったり、アノテーションの不確実性によって局地的なエラーが蓄積されてしまいます。

一人一人の患者の症例には、最適な画像のコントラストを得てセグメンテーションの精度をより高めるために、その患者に合わせて調整された周波数フィルターが必要になります。

そのため、それぞれの画像にあった最適な周波数フィルターと共にセグメンテーションネットワークのウェイトも学習できる、適応性のある周波数フィルタリングを用いたニューラルネットワークのレイヤーの発明を目指しました。

具体的には、著者らのモデルでは空間領域からソース画像を取得し、自動的に周波数領域から必要な周波数を選択、さらに逆変換した画像を畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に転送し同時セグメンテーションを行うことができます。

実験では、そうした「学習可能な」フィルターを用いる事で典型的なCNNの1種であるU-Netのセグメンテーションの性能を10%向上することができました。

また、その他の有名なモデル(DenseNetやResNet)のトレーニングを2倍近く速めることができました。

驚くべきことに、こうした特性は 超音波画像だけでなく自然画像にも用いることができます。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2010.01177

Pick Point

学習可能なフィルターを用いる事でセグメンテーションの性能が向上!

まとめ

以上、医療AIの分野で10月下旬に投稿された最新のarXiv論文を3つご紹介させていただきました。

興味のある内容がございましたら、ぜひURLから原文をお読みください。医療を手助けするAIの研究が現在進行形で、世界中で進められています。

皆様の日々の研究や患者さんの治療の際に何かしら参考になることがありましたら幸いです。長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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