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未来医療を考える vol.2

MILK株式会社代表の中矢です。

私はMILK株式会社という医療機器ベンチャーを立ち上げたことで、医師や看護師を含め、多くの医療従事者の方のお悩みをお聞きする機会をいただいております。

加えて、投資家や同業者の現場から一歩離れたマクロな視点での医療の見え方をお聞きすることもあります。

そこから感じ取れる私個人の視点からみた医療の未来についてお話できればと思います。

今回は特に病院の未来にフォーカスした話をしたいと思います。

1.保険点数制度の課題

現在、日本に存在する約8500病院のうち7割が赤字と言われています。病院の売上の大半は保険点数にもとづく診療報酬です。(注1)詳しくはここでは述べませんが、保険点数の1点は10円で換算し、基本的な考え方として「医療行為」にもとづいた計算になっています。

つまり、薬を処方したり、診断をしたり、また手術をするという「行為」ごとに金額が設定されています。

医療はビジネスではなく社会保障としての役割を期待されているため保険点数制のように「結果」ではなく「プロセス」に注目した評価は大切だと思います。

しかし、コロナパンデミックなど医療に求められる内容が刻々と変化する中で、この評価している「プロセス」が本当によい「結果」につながるかどうかを検証することは可能なのでしょうか?また、2年ごとに行われる診療報酬改定によってこの検証結果を正しく反映することは可能なのでしょうか?

私は、より柔軟性の高いシステムに変化させていく必要があると思います。

そしてそれが、日本全国の病院の赤字を黒字に変化させていくカギになると思います。

2. 病院に必要なイノベーションとは

営利・非営利の考えについても、柔軟性の高いシステムになる必要を感じます。

病院の約11%は公立・公的病院です。

昨年9月に厚生労働省が発表した「再編統合に関する議論が必要」とされる病院リストに、これらの病院の多くが記載されています。その理由として、経営状況の悪化や繰入金に頼りきった経営体質が指摘されています。

病院の機能には公共性が求められ、完全な営利事業になってはいけない面がありますから、公的病院の存在は必要です。しかしその存在意義は、そうでなければ適切な医療を受けられないような低所得の方々や、通常では人件費をまかなえない離島などでの医療に限定されるべきだと思います。

そして、そうしたセーフティーネットを整備した上で、多様な病院のあり方を許容し、適度な経営努力がなされる環境が作られることが理想だと思います。

医療法では、営利を目的とした病院などの開設は認可しないことが可能になっております。しかし、私は選択肢として、高額な医療費を払う代わりに、良いサービスを受けられる病院の存在は必要だと思います。そうした存在により、より良いサービスや医療の追及がなされて、日本の医療全体のクオリティが向上することを期待しています。

現在は、企業がクリニックや医療法人を買収するような案件も増えております。もちろん、これが単なる営利目的の企業の私欲に基づくものであってはなりません。

しかし、時代変化へ対応し、日本の高品質な医療を持続的なものとするためには、企業による強力なイノベーションも必要だと思います。

今後はICTやAIによる技術革新により病院のあり方も変化してくることは間違いないでしょう。これは完全な私見ですが、数年後にはバーチャル病院のようなサービスも普及してくるのではないかと考えています。遠隔診療だけでなく、遠隔で操作可能な治療器具が設置され、AIによる画像診断装置や薬の処方などが可能になることで、コンビニエンスストアや企業のオフィス、学校などで簡単な診断や処置を行えるようになることを期待しています。

日本の医療水準は非常に高く、最高齢の117歳の日本人女性をはじめとして長寿の国としても知られています。こうした医療水準を世界各地に広げていくためにも、全国一律でプロセス評価による診療報酬制度の緩和と多様な病院のあり方を許容する制度がいま求められているのではないでしょうか?

(参考文献)1.https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/syushityousa/11nen/tyousakekka.html

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