最新医療AI論文

【9月上旬】医療×AI 最新論文3選

こんにちは。MedTechToday編集部のいとうたかあきです。

arXivは、理数系の英語論文を無料で読むことができるWebサイトです。

https://arxiv.org/

時間のかかる査読プロセスを避け、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されていて、最新の研究の動向を把握するのにとても便利です。

本記事では、医療AIの分野で9月上旬に投稿された最新のarXiv論文を3つ紹介します。

1.乳房密度分類のための連合学習(Federated Learning)

アメリカのNVIDIAのHolger R.Roth氏らの論文です。

深層学習のモデルの頑健性(ロバスト性)は学習データの質、量、多様性によって決まります。

しかし、各臨床機関の医療データには限りがあるため、モデルの精度には限界があります。

また、医療データは個人情報であり、むやみに使用することができないため、世界のどこか一か所にデータを集約することが難しいのです。

これは医療に限らず様々な業界でみられる問題で、多くの人々の頭を悩ませてきました。

そんな中Googleが連合学習(Federated Learning)という枠組みを発表しました。

連合学習を使えば、このような問題を解決に導ける可能性があります。

連合学習ではデータを一か所にまとめず、ディープラーニングを分散化させ、各地でモデルのトレーニングを行います。

そして、各地で更新されたモデルを一度サーバーに集約し、最新のパラメータを構築し、各機関に配布するという流れを繰り返すことでモデルを訓練していきます。

この論文では患者の乳がん発症リスクを推定する上で重要な乳房密度による4つのクラスの分類をするために連合学習を使用しました。

世界の7つの臨床機関のそれぞれのトレーニングセットを用いてモデルをトレーニングしたところ、ある機関の現地データのみでモデルをトレーニングした場合よりも、平均して6.3%精度が高くなる結果が得られました。

連合学習は今後の医療においてさらなる発展が期待されています。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2009.01871

Pick Point

連合学習(7つの臨床機関のデータを用いた学習)により乳房密度分類の識別精度向上

2.教師なし機械学習を用いたフーリエタイコグラフィーによる明視野染色および蛍光染色

杭州電子科技大学のRuihai Wangらの論文です。

フーリエタイコグラフィー顕微鏡(FPM)は機械的なスキャニングを必要とせず、コンピュータによる計算を用いて高解像度かつ広視野の顕微鏡画像を高速に生成する手法です。

しかしながら、FPMをデジタルパソロジーに応用することはできていません。

その理由として挙げられるのは、組織スライドのFPMカラー画像を得るためには、赤、緑、青の照明によるデータを取得する必要があり、画像の獲得に手間がかかるからです。

このことは、組織画像の解像度とカラー情報が極めて重要である病理学において、FPMを応用する際の大きな課題となっています。

そこで、本論文の筆者らは、教師なしディープラーニングを用いたFPM画像から染色画像への変換を行う方法を提案しています。

筆者らはCycle-GANと呼ばれる画像変換に特化したディープラーニングを用いて、単色のFPM画像から干渉によるアーティファクトが軽減された免疫組織染色画像と蛍光染色画像を生成することに成功しています。

生成された画像の評価はmsSSIM(multiscale structural similarity index)という画質劣化指標などを参考にして行われ、結果として、カラーFPM画像よりも画質の良い顕微鏡染色画像の高速な生成に成功しています。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2008.06916

Pick Point

教師なしディープラーニングを用いて単色FPM画像を高画質の染色画像へ変換成功

3.FocusLiteNN: デジタルパソロジーのための高効率焦点品質評価

カナダのウォータールー大学のZhongling Wangらの論文です。

デジタルパソロジーにおいて、顕微鏡で検査する際ピントが合っていないとスライドからデータを多く取得することができず、これが大きなボトルネックとなっています。

そのため、ピクセルレベルで自動化されたFQA(焦点品質評価)手法は、この問題を解決するのに大いに役立つうえ、医療作業を早めることもできると期待されています。

そこでZhongling Wangらは、多様な組織スライドや染色を含むデータベース(FocusPath)を使い、トレーニングデータセットを作成し、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)を基にGPU 等の高度な計算リソースを必要としない高効率なモデルFocusLiteNNを提案しました。

このモデルは、既存の知識主導型(knowledge-driven)とデータ主導型(data-driven)のFQA手法と比べて、正確性とスピードのトレードオフの関係において、優れていることを示していました。

また、このモデルを作成する過程において、CNNの複雑性を減らすために、CNNのモデルを1カーネルサイズのレベルに削減しても、十分な性能を維持しているという驚くべき事実が判明しました。

FocusLiteNNは、速度の点ではすべてのSOTAモデルを上回り、最高精度モデルであるDenseNet-13との競合性を達成しています。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2007.06565

Pick Point

焦点品質評価のための高効率なモデルFocusLiteNNの開発に成功

まとめ

以上、医療AIの分野で9月上旬に投稿された最新のarXiv論文を3つご紹介させていただきました。

興味のある内容がございましたら、ぜひURLから原文をお読みください。

医療を手助けするAIの研究が現在進行形で、世界中で進められています。

皆様の日々の研究や患者さんの治療の際に何かしら参考になることがありましたら幸いです。

長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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