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未来医療を考える Vol.1

MILK株式会社代表の中矢です。

私はMILK株式会社という医療機器ベンチャーを立ち上げたことで、医師や看護師を含め、多くの医療従事者の方のお悩みをお聞きする機会をいただいております。

加えて、投資家や同業者の現場から一歩離れたマクロな視点での医療の見え方をお聞きすることもあります。

そこから感じ取れる私、中矢の視点からみた医療の未来について、

今後、定期的に更新できればと思います。

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新型コロナウイルスの影響を受け、医療機関にお勤めの方々で、これから先、世の中がどう変化してしまうのか不安視されている方も多いのではないでしょうか?

実際に、コロナウイルスの影響で院への訪問が激減し、「日本の病院の3分の2が赤字である」との報道もあり、経営が立ち行かなくなっている医療機関が増加していることは事実だと思います。

しかし、私はこのような状況にあっても日本の医療の将来は明るいと信じています。

なぜか、というと3つの理由があります。

根拠①医療ニーズが依然として増加傾向にあること

「医療崩壊」や「院内感染」の報道を見ていると忘れがちになりますが、医療ニーズは増加傾向にあります。

総務省によると、65才以上の人口は3000万を今後30年以上キープしています。そのため、病院の外来患者数や看護・介護のニーズは高水準で維持されると予想できます。

その上、予防医療のマーケットが増加傾向にあります。

予防医療には、感染症の予防のほか、睡眠やメンタルヘルスも含まれています。2015年には大企業向けにストレステストが義務化され、心理カウンセラーの活躍の場も増えています。

では、予防医療として簡易的な検査や訪問診療が普及することで病院の仕事は失われるでしょうか?

厚生労働省の統計によると、1990年代から2017年に至るまで病院やクリニック全体の外来患者数は安定しています。一方で、訪問診療の割合は、この20年で約4倍増加しています。

このことから予防医療が進むことが病院の仕事を奪うのではなく、むしろ新たなマーケットを創造しているといえるのではないでしょうか。

以上のことから、現在の外来患者数の低下は新型コロナウイルスによる一時的なものであると考えています。

根拠②医療ベンチャーへの投資額の増加

いま、医療機器や再生医療分野のベンチャーに注目が集まっています。

国外では、グーグルやマイクロソフトなどが有名ですが、国内でも今年に入ってエムスリーなど大手が100億円のスタートアップ投資を始めています。

厚生労働省や銀行もファンドを形成し、医療機器ベンチャーへの投資が増えていくことは間違いないでしょう。

ベンチャーの成長による医療技術の革新が進むことで、医療の業務効率化や信頼性向上が期待できます。その結果、病院の『たらい回し』などの社会問題が解決し、経営状況も好転していくと考えられます。

医療機関に働いていらっしゃる方は「ITやAIによって仕事が取って替わられるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、CTやX線、MRIのような高度な医療機器が導入されたことで臨床検査技師という職業が生まれることもあります。

また、業務効率化により病院の財務体制が向上することで、人間の高度な判断能力が求められる「診断」業務や、人と人のコミュニケーションが重要な「看護」業務などへのさらなる投資も期待できます。

野村総合研究所の研究レポートによると、「人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業」に医師の多くがランクインしていることもAIが医療関係者と共存していく未来が到来することを予見していると考えられます。

根拠③規制緩和による経営効率の向上

新型コロナウイルスによる「怪我の功名」ともいえる事態が起きています。

今年の4月からスマートフォンや電話によるオンライン診療が幕を開けました。こうした動きに対する賛否は分かれておりますが、一つの象徴的な出来事であると感じています。

中国では、画像診断AIが申請から1ヶ月以内に日本で薬事承認にあたる承認を受け、病院に導入されています。日本では最短で1年~2年といわれていることを考えると、異例のスピードです。

また、パーソナルヘルスレコード(PHR)は世界的な流れとなっており、医療情報の取り扱いに関する法規制について盛んに議論が行われています。今後、ますますデジタル化や個別化医療の流れが進んでいくことは間違いないと思われます。

こうした状況を受け、私は日本の医療にそうした規制緩和の波が押し寄せると考えています。

規制緩和による一時的な混乱は予想されます。しかし、そうした便利さや快適性を享受する人が増えていくことは、結果的に医療マーケット全体を拡大させる方向に働くと考えています。

まとめ

MILKでは、ハイパースペクトル技術という宇宙技術を用いて診断をサポートするAIシステムを開発しています。

このハイパースペクトル技術は、光の情報を高精度に捉えることにより、非侵襲・非接触で手術中の血管や組織の可視化、病理診断のサポート、内視鏡のAI診断など幅広い分野に応用することが可能です。

私は、この新しい技術により、新しい視点をもたらし、医療のさらなる発展に貢献できたらと考えています。

技術革新により、医療従事者の働き方が改善され、より多くの人が高度な医療を受けられるようになる未来を期待しています。

【参考】

〇厚生労働省 平成29年(2017)患者調査の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/kanja-01.pdf

〇総務省統計局 高齢者の人口

https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html

〇日本経済新聞2020年4月22日「エムスリー、医療スタートアップへ100億円ファンド」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58353650S0A420C2XB0000/

〇株式会社野村総合研究所 NRI未来創発センター

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf

〇MedTech Today 公式Twitter 7月7日のツイート

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