最新医療AI論文

【7月下旬】医療×AI 最新論文3選

こんにちは。

MedTechToday編集部のいとうたかあきです。

arXivは、理数系の英語論文を無料で読むことができるWebサイトです。

https://arxiv.org/

時間のかかる査読プロセスを避け、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されていて、最新の研究の動向を把握するのにとても便利です。

本記事では、医療AIの分野で7月下旬に投稿された最新のarXiv論文を3つ紹介します。

1. COVID-19への人工知能の応用に関する調査研究

中国の湘南大学のJianguo Chenらの論文です。

中国で発生した新型コロナウイルスは急速に世界に拡大しており、現在も多くの政府、企業、研究機関はパンデミックを抑制するために戦っています。

その中でも、COVID-19に対する強力なツールとして、AIが広く使われていることから、本論文では病気の発見や診断、ウイルス学と発病学、ワクチンの開発伝染や感染の予測といった観点からCOVID-19に対するAIの応用研究がまとめられています。

紹介されている研究としては、

  • CT画像やX線画像とCNNを用いた感染領域の検出
  • タンパク質との相互作用の解析やウィルス起源の予測
  • COVID-19に有効な可能性のあるのスクリーニング
  • 血液検査とランダムフォレストを用いた肺炎・結核・肺がんとCOVID-19の識別
  • ディープラーニングを用いたタンパク質構造からの有効な化学物質の予測
  • 医療データや交通情報などのビッグデータを組み合わせた感染予測

などが挙げられます。

また、実際に公開されているCOVID-19問連のデータなどについてもまとめられており、今後の研究に対する方向性についても議論されています。

論文の詳細はこちら↓

https://arxiv.org/abs/2007.02202

2. COVID-19における救急医療用マスク製造のリアルタイムニューラルネットワークスケジューリング

中国の杭州師範大学のChen-Xin Wuらの論文です。

新型コロナウイルス(COVID-19)によって医療用マスクの需要が増加し、マスク製造業者にとって許容量を超えた大量の受注が発生しています。

そのため効率的なマスク製造のスケジューリングが重要となるのですが、既存の手法では大量の計算リソースが必要となります。

本研究では深層強化学習を用いて既存の手法と比べ高速で質の高いリアルタイムで生産タスクのスケジューラ(スケジューリングを行うための仕組み)を作成することに成功しました。

さらに、本論文で提案したニューラルネットワークスケジューラを、中国のCOVID-19のピーク時に医療用マスクメーカーに適用して運用した結果、非常に短い計算時間で緊急生産の要求を満たす高品質なソリューションを実現できることが示されました。

今後、世界的パンデミックで緊急に医療器具が足りなくなることも予想されます。命に関わるものだからこそ、適切な生産管理の仕組みがAIによって浸透していくことが求められます。

論文の詳細はこちら↓

https://arxiv.org/abs/2007.1405

3.異常の適切な場所を探す:自動位置学習による説明可能なAI

IBMリサーチのSatyananda Kashyapらの論文です。

現在、ディープラーニングは医用画像における癌などの異常を識別するための手法の一つとなっています。

しかし、ディープラーニングは癌などを異常ラベルに分類する際に人工知能がどのように考え分類したのかが「ブラックボックス」となってしまい、臨床医にとっては受け入れ難いという問題があります。

現時点では、ディープラーニングの説明としてヒートマップのような物で人工知能がどこを見て分類しているかを可視化する技術などもありますが、ネットワークが完全に癌などの異常ラベルを含む画像領域を識別しているかどうかは保証されていません。

本研究では、医用画像に癌などの異常が存在する場合に、その異常が人工知能により予想される位置に重なっていることを保証する説明可能AIへのアプローチを開発しています。

これは、テキストレポートから位置特定ラベルを自動的に抽出し、RNNの派生の一つであるBi-Directional Long Short-Term Memory Recurrent Neural Networks (Bi-LSTM)とCNNの派生であるDenseNet-121のハイブリッドな組み合わせを用いて、予想される位置のラベルへの関連付けを学習することで可能になります。

この論文では、RSNA 肺炎データセットのテキストレポートと人の手によって範囲選択された2000枚の画像で訓練され、643枚の画像で検証されました。

結果、RSNA チャレンジからの検証データセットの平均mIOUは0.544であり、対象の領域の位置をおおむね正しく捉えていました。

※mIOUとは、IOUという物体検知の時によく使われている評価指標を用いて複数枚について計算しその平均をとったもので、IOUの最大値は1で、最小値は0をとります。

論文の詳細はこちら↓

https://arxiv.org/abs/2008.00363

まとめ

以上、医療AIの分野で7月下旬に投稿された最新のarXiv論文を3つご紹介させていただきました。興味のある内容がございましたら、ぜひURLから原文をお読みください。

医療を手助けするAIの研究が現在進行形で、世界中で進められています。

皆様の日々の研究や患者さんの治療の際に何かしら参考になることがありましたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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