最新医療AI論文

【7月上旬】医療×AI 最新論文 3選

こんにちは。

MedTechToday編集部のおぐらしょうごです。

arXivは、理数系の英語論文を無料で読むことができるWebサイトです。

https://arxiv.org/

時間のかかる査読プロセスを避け、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されていて、最新の研究の動向を把握するのにとても便利です。

本記事では、医療AIの分野で7月上旬に投稿された最新のarXiv論文を3つ紹介します。

1.ディープラーニングに基づく計算病理学による原発不明がんの起源予測

ハーバードメディカルスクールのMing Y. Luらの論文です。

すべてのがんの中で1~3%が「原発不明癌」と分類され、そのがんの発生部位を特定できないでいます。

病理医はいくつもの免疫染色を用いることで、発生部位を読み解こうとしていますが、識別できる割合はなかなか向上しません。

原発特定の研究が進んでいる遺伝子検査を用いることもできますが、実施する設備が医療現場に十分に浸透しておらず、すべての患者が利用することはできない状態です。

そこで本論文では、18種の異なる臓器の17486ギガピクセルのHEスライド画像24885枚から弱教師あり学習で転移状況と発生部位を特定しています。

4932症例を用いて評価した結果、トップ1モデル(予測の上位1番目が正しい)で84%、トップ3モデル(予測の上位3番目までが正しい)で94%の精度を達成しています。

本研究の方法が実践的に使用されれば、免疫染色と対比、またはそれに代わる診断法として利用できます。

また、今後研究が進むことで原発不明癌として診断される割合を減らすことが可能であると著者らは主張しています。

論文はこちらからお読みいただけます。↓

Deep Learning-based Computational Pathology Predicts Origins.pdf

2.デジタルパソロジーにおけるグラフ表現の説明に向けた研究

スイスのIBMリサーチZurichのGuillaume Jaumeによる論文です。

機械学習技術を臨床現場に応用するには、その内部で何が行われているかを説明できる必要があります。

そのため近年では、病理画像を表現し、評価するために互いに関係性を持つ細胞内の要素を符号化する「グラフ化技術」が用いられています。

本論文では、post hoc explainerという手法によってグラフ内の診断に重要な要素を強調する方法が提案されました。

まず、病理画像をセルグラフ(細胞グラフ)にして学習用データとして乳がんのサブタイプ予測を行ないます。

そして、instance-level post-hoc explainability methodという方法を用いてグラフ化された病理画像から不要な要素を削除することで、診断結果の予測根拠について従来よりも明確な説明を与えることができました。

この研究は乳がんのサブタイプにおける細胞や細胞間相互作用を解析することに主眼をおいていますが、提案された画像のグラフ表現方法は他の病理画像においても利用することのできる方法であると筆者は主張しています。

論文はこちらからお読みいただけます。↓

Towards Explainable Graph Representations in Digitap Pathology.pdf

3.乳がん画像からのディープラーニング特徴量の教師なし学習

マーシャル大学のSanghoon Leeによる論文です。

大量のスライド画像から癌を検出するにはかなりの時間と労力が必要です。

この論文では、人手を必要としないだけでなく、精度の高い予測結果を得るために教師なし学習でのアプローチを提案しています。

まず、The Cancer Genome Atlas at the Genomic Data (TCGA) から取得した7つの乳房浸潤癌(BRCA)画像に前処理を施します。

それを組織領域をタイル画像に分割し、色の正規化と正方形のテッセレーションによるセグメント化(ラベル付け)を行い特徴量を抽出、その後、教師なし学習アルゴリズムの一種であるK-meansクラスタリングを用いて癌の識別を行います。

結果として、精度とF1スコアの平均はデータセット全体でそれぞれ0.8454と0.8293を出すことに成功しました。

本論文で提案された方法は完全に自動化されており、人間の関与を必要としていません。

また、この方法を使いユーザーの手間がかからない癌検出ツールのプロトタイプを開発しておりビッグデータ時代における病理医の負担を軽減するのに貢献しています。

論文はこちらからお読みいただけます↓

Unsupervised Learning of Deep-Learned Features.pdf

まとめ

以上、医療AIの分野で7月上旬に投稿された最新のarXiv論文を3つご紹介させていただきました。興味のある内容がございましたら、ぜひURLから原文をお読みください。

医療を手助けするAIの研究が現在進行形で、世界中で進められています。

皆様の日々の研究や患者さんの治療の際に何かしら参考になることがありましたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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