最新医療AI論文

【2020年6月下旬】 医療×AI 最新論文3選

MedTechToday編集部のおぐらしょうごです。

arXivは、理数系の英語論文を無料で読むことができるWebサイトです。

時間のかかる査読プロセスを避け、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されていて、最新の研究の動向を把握するのにとても便利です。

本記事では、医療AIの分野で6月上旬に投稿された最新のarXiv論文を3つ紹介します。

1.ポイントアノテーションを利用した細胞核のインスタンスセグメンテーション

フォトAC

国立成功大学(台湾)のTing-An Yenによる論文です。

デジタル病理学の分野では、ディープラーニング利用が注目を浴びていますが、トレーニングデータを作成するコストの高いことが課題の一つとなっています。

そこで、本研究では経験豊富な病理医によるアノテーションが特に必要となる、細胞核のセグメンテーションに着目した効率化を検討しています。

本研究の特徴は、少数のアノテーションを使って「疑似ラベル」を自動的に生成している点です。

限られたアノテーションのデータを用いて自動的にラベルを生成することで、アノテーションにかかる病理医の負担を軽減しています。

実験では、自動生成された疑似ラベルを使って、修正したHoVer-NetモデルとHoVer-Netモデルを学習させ、細胞核のセグメンテーションにおける性能の比較を行なっています。

結果として、修正したHoVer-Netモデルは、修正していないモデルと比べてわずかに汎化性能が高いことがわかりました。

筆者らは、疑似ラベルを用いて得られた性能が通常のアノテーションラベルを用いた場合にほとんど劣らないことから、半教師あり機械学習や教師なし機械学習の可能性についても期待できると考えています。

↓ 論文はこちらからお読みいただけます。

https://arxiv.org/abs/2006.13556

2. グラフ畳み込みニューラルネットワークを用いた病理組織画像の可視化

フォトAC

インド工科大学のMookund Surekaによる論文です。

近年、病理診断においてディープラーニングの使用が増加しています。

しかしながら、医療分野においては診断根拠が重要であり、また病気やその治療メカニズムの解明を目指していることから、ディープラーニングが良い結果を出しても、その中身がブラックボックスであることには問題があります。

そこで本研究では、①Attention機構という画像内の特徴を可視化する方法と、②Node-Occlusion画像を単純化する方法の2つを利用して、グラフ畳み込みニューラルネットワークモデルを構築し、その問題を解消しています。

このモデルにより、ホールスライドイメージでのがん診断で重要となる部分が強調された、意味解釈が容易な画像の作成に成功しました。

可視化の対象は、乳がんのin-situ型とxsc浸潤型、そして前立腺がんのグリーソン分類におけるグレード3+3とグレード4+4および4+5です。

特に乳がんにおいては、in-situ型と浸潤型の持つ組織構造の違いをうまく捉えた画像の作成に成功しています。また、前立腺がんにおける特徴の1つでもある、構造の崩れた腺組織部分の細胞核が強調されています。

本研究によって、現在の病理診断に正当性を保証するのみならず、病変組織の構造の違いを新たに明らかにする可能性が示唆されたと言えます。 

↓ 論文はこちらからお読みいただけます。

https://arxiv.org/abs/2006.09464

3. 回帰型ニューラルネットワーク(RNN)を用いた心臓シネMRIにおけるモーションアーティファクトの軽減

UNSPLASH

Qing Lyu, Student Member, IEEEの論文です。

CTスキャンとは違い、MRIは撮影に時間がかかります。

このことから、MRI画像におけるモーションアーティファクトと患者の不快感は避けられません。

そのため、MRIにおいて撮影時間の短縮とモーションアーティファクトの軽減を実現する技術の開発が期待されてきました。

そこで、本研究では、質の低いMRI画像やブレのあるMRI画像から空間情報と時間情報を一挙に取得し、高品質なMRI画像を再現する回帰型ニューラルネットワーク(RNN)の利用法が提案されています。

結果として、実験に用いた2種類のデータセットついてかなり画質の改善された画像を得られたことが報告されています。

また、この方法ではデータに基づいて時間解像度を高めることが可能となっています。

本研究におけるディープラーニングのMRI画像における応用は、SSIMとPSNRという一般の画質評価における指標において、既存の機械学習手法よりも優れていることが示されています。

将来的には、この技術を利用した高画質で短時間のMRI画像の撮影が期待されます。

↓ 論文はこちらからお読みいただけます。

https://arxiv.org/abs/2006.12700

まとめ

以上、医療AIの分野で6月上旬に投稿された最新のarXiv論文を3つご紹介させていただきました。興味のある内容がございましたら、ぜひURLから原文をお読みください。

医療を手助けするAIの研究が現在進行形で、世界中で進められています。

皆様の日々の研究や患者さんの治療の際に何かしら参考になることがありましたら幸いです。長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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