最新医療AI論文

【2020年6月上旬】 医療×AI 最新論文3選

MedTechToday編集部のいとうたかあきです。

arXivは、理数系の英語論文を無料で読むことができるWebサイトです。

時間のかかる査読プロセスを避け、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されていて、最新の研究の動向を把握するのにとても便利です。

本記事では、医療AIの分野で6月上旬に投稿された最新のarXiv論文を3つ紹介します。

1. 機械学習を利用した定期血液検査によるCOVID-19の診断

Smart Blood Analytics  (https://www.smartbloodanalytics.com/)のMatjaž Kukarらの論文の概要です。

コロナウイルス(COVID-19)に感染すると患者の定期血液検査のパラメータにわずかな変化が起きる事がわかってきています。しかし、優れた医師であっても、血液検査の結果から抽出できる情報は僅か一部であると言われており、コロナウイルスとその他の感染症患者の識別は血液検査の結果だけでは困難です。

この論文は機械学習を用いて血液検査結果の微細な変化を捉えコロナウイルスとその他の感染症患者の識別に成功したということを報告しています。

様々な細菌およびウイルス感染症を有する5,333人の患者と、160人のCOVID-19陽性患者の血液検査結果を機械学習アルゴリズムのディープニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、XGboostを用いて学習し、識別したところ、結果として感度81.9%,特異度97.9%が得られました。

また、XGboostの特徴量重要度スコアから、MCHC、好酸球数、アルブミン、INR、プロトロンビン活性パーセンテージの5つがコロナウイルス診断において重要なパラメータであることが判明しました。

また、tSNEを用いた次元削減によって血液検査結果のパラメータを可視化し、コロナウイルス患者のパラメータがウイルス感染よりも細菌感染に近いことが示されました。

この研究はCOVID-19の診断に大きく貢献するものと思われます。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2006.03476

2.ディープラーニングを用いたヒトタンパク質の細胞内局在情報の特定

Sandy Spring Friends SchoolのHanke Chenの論文の概要です。

細胞内タンパク質の局在情報の特定は、限られた種類のタンパク質に留まり、非常に時間がかかる点で課題があります。

本論文ではこの課題を解決するために、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、27種類の異なる細胞を、28種類のタンパク質パターンに分類する自動画像分類器を実装しています。

その結果、正解率63.07%が得られ、人間による正解率を35%上回りました。多種類の細胞に対しては従来のアプローチよりもはるかに有意な結果です。

さらに、1分間に4500枚の画像を分類することができ、速度の面でも人間を上回りました。

細胞内タンパク質の局在情報が分かることで、ウイルス感染、病原体の侵入、悪性腫瘍の発生など、細胞の異常を容易に検出する事ができるため、今後の細胞内工学、医療、病院検査などにおいても活用が期待できます。

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2006.03800

3.医用画像のための3D教師なし学習手法

Potsdam UniversityのAiham Talebらの論文の概要です。

この論文では、従来の教師なし特徴表現学習手法を用いて、3D医療スキャンデータを学習させた結果を示しています。

教師なし特徴表現学習とは、教師がないデータ(ラベル付けがなされていないデータ)を用いて、特徴量を獲得する機械学習の手法です。

3D医療スキャン(MRIのデータなど)の場合、手動でのアノテーション(ラベル付け)は高価で時間がかり、十分に対処することができません

そのため精度の高い教師なし特徴表現学習が開発されれば、アノテーションに必要なコストを削減することができ、開業医が必要とする注釈の労力とコスト削減に役立ちます。

本論文では、3D MRIを用いた脳腫瘍セグメンテーション(脳腫瘍の部位の特定)のケースで、22000枚の3Dスキャン画像をUK Biobank (UKB)のデータから取得し、脳MRIデータの事前トレーニングを行っています。

具体的には
腫瘍のコアにアノテーションを行い2D画像のスライスでトレーニングする場合と3D画像でトレーニングを行った場合とで比較すると2D画像のスライスではF1スコアが87.91で3D画像でのトレーニングでは90.71でした。

結果として
3D画像でトレーニングすることにより正確に脳腫瘍の識別を行うことができることがわかりました

論文の詳細

https://arxiv.org/abs/2006.03829

まとめ

以上、医療AIの分野で6月上旬に投稿された最新のarXiv論文を3つご紹介させていただきました。興味のある内容がございましたら、ぜひURLから原文をお読みください。

医療を手助けするAIの研究が現在進行形で、世界中で進められています。

皆様の日々の研究や患者さんの治療の際に何かしら参考になることがありましたら幸いです。長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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