こんにちは。
MedTechToday編集部のいとうたかあきです。
arXivは、理数系の英語論文を無料で読むことができるWebサイトです。
時間のかかる査読プロセスを避け、素早い情報交換を行なうことを目的として設置されていて、最新の研究の動向を把握するのにとても便利です。
本記事では、医療AIの分野で4月下旬に投稿された最新のarXiv論文を3つ紹介します。
Contents
1.新しい肺超音波画像データセット(POCUS)からのCOVID-19の自動検出

スイス連邦工科大学チューリッヒ校のJannis Bornらの論文の概要です。
COVID-19のグローバルパンデミックへの急速な発展に伴い、医師がCOVID-19の診断を支援できる安価で高速で信頼性の高いツールが緊急に必要とされています。
そのような情勢の中、超音波は非侵襲的であり、世界中の医療施設の至る所にあるため、コロナの検査ツールとして注目を集めています。
この論文では、
64個のビデオからサンプリングされた、1103枚の画像(COVID-19 654例、細菌性肺炎277例、健常対照172例)からなる肺超音波(POCUS)データセットを収集、
この3クラスで畳み込みニューラルネットワーク(POCOVID-Net)をトレーニングすることで各画像89%の精度、多数決により92%のビデオ精度を達成したという結果が報告されました。
特にCOVID-19の検出の場合、感度が0.96、特異度が0.79、F1スコアが0.92という結果が得られています。
さらに、著者らはhttps://pocovidscreen.orgで利用できるオープンアクセスWebサービス(POCOVIDScreen)の提供を行っています。
このWebサービスの特徴は、
1つは、ユーザーが肺超音波画像をアップロードすることにより、肺超音波(POCUS)データセットに追加する形でのオープンアクセスデータセットの増加に貢献できる点。
2つめは、ユーザーがトレーニング済みモデルにアクセスして、自分たちのラベル付けされていないデータで迅速なスクリーニングを実行できる点です。
論文の詳細:https://arxiv.org/abs/2004.12084
2.ImageNetを使用した医用画像分析に関する転移学習研究のスコーピングレビュー

アメリカのカリフォルニア州にあるサンタクララ大学のMohammad Amin Moridらの論文の概要です。
非医療のImageNetデータセットでトレーニングされた、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)で転移学習(TL)を採用することが最近のトレンドです。
転移学習とは、ある領域で学習させたモデルを、別の領域に適応させる技術で、
これを使うことで広くデータが手に入る領域で学習させたモデルを少ないデータしかない領域にも適応させることができます。
また、スコーピングレビューというのは、特定のトピックに関する利用可能な文献の潜在的なサイズと範囲を特定することで、研究領域の全体観をつかむための資料になります。
この論文の調査結果としては、
22の解剖学的領域のうち、目(18%)、乳房(14%)、および脳(12%)が最も研究されており、
Inceptionモデルでは乳房関連の研究で(50%)、VGGNetでは眼(44%)、皮膚(50%)、歯(57%)の研究、AlexNetでは脳(42%)、DenseNetでは肺(38%)の研究で最も一般的に用いられていることがわかりました。
また、使用されている研究領域としては、
Inceptionモデルでは、超音波(55%)、内視鏡検査(57%)、骨格系X線(57%)、
VGGNetでは、眼底(42%)と光干渉断層画像(50%)で、
AlexNetでは、脳MRI(36%)と乳房X線(50%)において最も頻繁に使用されていることがわかりました。
論文の詳細:https://arxiv.org/abs/2004.13175
3.後期ガドリニウム増強心臓磁気共鳴イメージングをセグメント化するためのアルゴリズムのグローバルベンチマーク

ニュージーランドのオークランド大学のZhaohan Xiongらの論文の概要です。
罹患した心臓の構造を視覚化するために広く使用されている後期ガドリニウム増強磁気共鳴画像法(LGE-MRI)において、心臓の画像のセグメンテーション(領域抽出)は、臨床診断と治療において重要なステップです。
しかし、LGE-MRIのセグメンテーションは、そのコントラストの弱さのために困難であると言われています。
そのため現在は手作業と労働集約的なアプローチに依存し、自動化や機械学習アプローチに非常に強い関心が集まっています。
この論文には、この問題に対処するために、オークランド大学が「2018左心房セグメンテーションチャレンジ」を実施し、27の国際チームが参加したことが書かれています。
「セグメンテーションチャレンジ」の結果として、最も精度の高い手法で
セグメンテーションの評価指標であるダイス係数が93.2%、実際の位置と予測位置の平均距離0.7 mmを達成し、
従来の最先端技術を大幅に上回りました。
優勝チームの手法は、CNNを二重に使用した点が特徴的です。
最初のCNNを関心領域(ROI)の自動位置確定のために、
後続のCNNが領域のセグメンテーションのために使用されました。
この手法は、単一のCNNを使用する従来の方法よりもはるかに優れた結果を達成することを示しました。
論文の詳細:https://arxiv.org/abs/2004.12314
まとめ
以上、医療AIの分野で4月下旬に投稿された最新のarXiv論文を
3つご紹介させていただきました。
興味のある内容がございましたら、ぜひURLから原文をお読みください。
医療を手助けするAIの研究が現在進行形で、世界中で進められています。
皆様の日々の研究や患者さんの治療の際に何かしら参考になることがありましたら幸いです。
長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。